学びの入口
自校作成校への合格を目指すにあたり、まず大切になるのは、各校の入試問題がどのような力を求めているかを正しく知り、「なぜ自分はこの学校を選ぶのか」という思いをはっきりさせることです。共通問題校では、内申点や模試の点数が重く見られることが多いですが、自校作成校では、「どの力を、なぜ評価するのか」という入試設計の考えをしっかり読み取ることが求められます。この段階では、日比谷・西・国立といった各校の過去問題にふれ、記述の量や設問の流れ、文章の深さに静かに気づくことを通して、自分の学び方を準備していきます。そして、「なぜ思考力が大切にされるのか」「この学校に合った学び方とは何か」という問いに、自分なりの言葉で、確かに応えられること。それが、この段階でめざす大きな一歩となります。思考力を発揮するためには、まず各教科で確かな土台を持っていることが大切です。この段階では、社会・英語・数学など、それぞれの基礎知識を、単なる暗記にとどめず、「考えるための材料」として準備していきます。たとえば、社会では年号をただ覚えるのではなく、出来事同士のつながりを考えながら整理すること、英語では単語を意味の違いごとに分けて覚え、ニュアンスに気づくこと、数学では公式を覚えるだけでなく、「どんなときに使うのか」「なぜそうなるのか」を理解しながらまとめ直していきます。共通問題校では、知識の正確さそのものが大切にされる場面が多く見られますが、自校作成校では、「なぜそうなるのか」「何が違うのか」といった一歩深い理解が求められます。だからこそ、この段階では、知識をただ集めるのではなく、使えるかたちで落ち着いて積み重ねていくことが大切です。ここで育てた基礎は、これからの思考や記述の支えとなり、力を発揮する礎となっていきます。
力を育てる時間
この段階では、身につけた知識を使って、「どう考えを組み立てるか」に目を向けていきます。自校作成校の国語や英語では、本文をもとに、理由や対比を整理しながら、筋道を立てて記述する力が問われます。ここでは、因果関係、対比、抽象と具体の行き来、段落のまとまり方など、「考えるときの型」を、読み取りと書き表す両方の面から繰り返し確認していきます。数学でも、答えを出すだけでなく、「どんな条件があって」「どの順番で考えたか」を言葉にして伝える練習を積み重ねます。共通問題校では短い答えを選ぶ問題が多いですが、自校作成校では、自分で道筋を組み立て、考えの流れを示すことが求められます。この段階では、論理の型を確かに身につけ、思考にぶれない芯を育てていきます。都立トップ校の自校作成問題では、単元ごとの知識や技能を超えて、それらを組み合わせながら、初めて出会う問いに対応できる力が求められます。この段階で目指すのは、「初めて見る問題」でも、これまで積み上げた知識や考え方を土台にして、自分なりに応用・工夫できる力です。各教科では、いくつかの単元を横断する総合型の問題や、条件が少し変わった応用問題に取り組みながら、「知っていることをどう使うか」を意識して練習を重ねます。たとえば数学では、関数と図形を組み合わせた問題、国語では複数資料を読み比べまとめる問題、英語では長文読解から要約・英作文までを一連の流れで行う演習を進めます。初めて見る問題に向き合うと、「どこから手をつけたらいいか分からない」と戸惑うこともありますが、こうした場面こそ、複合的に考える力が育っていく大切な機会となります。保護者の方からも、「基礎問題には強いけれど、応用になると急に難しくなる」といったご相談をいただきますが、それは知識が足りないわけではなく、知識を新しい場面で使い直す力がこれから育っていく段階にあるということです。この段階では、ただ正解を出すことだけで満足せず、自分から問題を切り拓いていく意識を持ち、得点の可能性を一段高く広げる準備を準備していきます。
自信につなげる挑戦
入試本番では、知識や力があるだけではなく、限られた時間の中で「どの問題をどう解くか」を冷静に判断する力が求められます。この段階では、「どう解くか」だけでなく、「どの順番で、どの問題に、どれだけ時間と力を使うか」を考えながら取り組む力を育てていきます。具体的には、過去問や塾内オリジナル予想問題を使い、時間を区切って演習しながら、「先に本文を読むか、先に設問を見るか」「記述問題をどのタイミングで書くか」「時間がかかりそうな問題は飛ばすかどうか」など、ひとつひとつを練習していきます。特に国語や理科・社会では、「時間がなくて最後まで書けなかった」「最初の問題で迷いすぎて後半がおろそかになった」という失点パターンがよく見られるため、時間配分と問題選びの力がとても大切になります。また、数学では後半の難しい問題に挑戦するか見送るか、英語では和訳と英作文の時間をどう配分するかなど、教科ごとの判断力も鍛えていきます。保護者の方にとっても、「頑張っているのに本番で点が取れない」というお悩みの背景には、努力不足ではなく、試験中の処理の組み立て方に課題があるとご理解いただける内容となります。この段階を通じて、入試本番で落ち着いて考え、柔軟に動ける力──つまり「実戦に強い思考の土台」を準備していきます。学びの最後の段階で大切なのは、正しい答えを出すだけではなく、自分でふり返り、必要な直しを考えて行動できる力です。この段階では、生徒が行った問題模試や過去問の見直しを通して、「どこで間違えたのか」「次はどう直せばいいか」を自分の言葉で整理し、学びを自分の力で準備する練習をしていきます。具体的には、模試の答案を使って、①問題の読み違い、②根拠不足、③説明の甘さ、④時間の使い方のミス、といった原因を分けて書き出し、整理していきます。さらに、もう一度書き直したり、自分で添削したり、似た問題に挑戦したりする中で、「何がズレていたのか」を自分で意識できるようにしていきます。この力が身についてくると、先生や保護者からのアドバイスを待たずに、「これは設問の読み取りミス」「これは自分の考え方のズレだった」と、自分でふり返る姿勢が自然に育っていきます。保護者の方にとっても、「わが子がどこでつまずいているのか分かりづらい」という不安が、「本人が自分で課題を言葉にできる」という安心感に変わる段階となります。