層 | どんな力か | よくあるつまずき |
①読みほぐし | 難しい言葉・文章の形・背景の知識を理解して、スムーズに読めるようにする力 | 知らない言葉が多くて、意味がわからないまま読み飛ばしてしまう |
②流れをつかむ | 「なぜ?」「どうちがう?」を整理しながら、文章の中の考えの流れをつかむ力 | 文章は読んだのに、「けっきょく何が言いたいのか」が分からない |
③問を読む | 設問に出てくる言葉・条件・文字数などを正しく読みとって、ズレのない答えを書く力 | 指示語や条件を見落として、部分的にしか答えられていないことがある |
④考え進める | 自分の考えを「順序立てて、わかりやすく」説明できるようにする力 | 頭の中がごちゃごちゃで、何から書きはじめていいかわからなくなる |
⑤書き上げ | 段落や接続語の使い方を意識して、すじ道のある文章として書きあげる力 | 書きはじめで止まる、途中で話がそれる、まとめきれず終わることが多い |
⑥答えを磨く | 自分の答案をふり返って、「どこがずれていたか」「どう直せばいいか」に気づく力 | 記述で何が足りなかったのかがわからず、改善できないまま終わってしまう |
①読みほぐし
自校作成校では、いずれの教科でも設問に至る前段階として「読解力」が求められます。しかし、その“読解力”は単なる語彙の知識ではなく、「素材の背景や文脈を想像できる力」「初見のテーマを前向きに読み解く姿勢」といった文章の“前提を共有する力”に支えられています。この層では、文章や問題文に出てくる語彙・テーマ・背景事象を事前に押さえ、「そもそも何が書いてあるか分からない」状態を防ぎます。たとえば国語では、近代思想や哲学、ジェンダー・労働など、社会的かつ抽象的なテーマが扱われることも多く、知識のない生徒は“読めるふり”をして文章を流しがちです。また、理社でも、図やグラフ・データに表れる情報の意味や背景を見抜けないと、設問以前でつまずいてしまいます。この層では、予習段階でのテーマ理解、用語・概念の簡潔なインプット、新聞コラムや説明文への接触を通して、「文章と自分をつなぐ橋」を架ける訓練を行います。保護者にとっては、「問題を読めていない」という根本的なズレに対して、“読みの準備をつくる”という設計があることが安心につながる層です。
②流れをつかむ
素材を理解しただけでは、自校作成校の入試で高得点を取ることはできません。次に必要なのは、文章の中に潜む「論理構造」を見抜く力です。この層では、文章のどこが“主張”で、どこが“理由”なのか。段落ごとにどう因果がつながり、どこに対比があるのかを、“頭の中にフレームをつくりながら読む”訓練を行います。国語であれば、評論文や複数資料文において「問題提起→理由→例→再主張」といった流れを意識的に追う練習を重ねます。英語では、「逆説」や「譲歩」の構文をマークし、著者の立場を把握しながら読解する力を鍛えます。理社の資料問題でも、数値変化や図表の構成から「問いの視点」に気づくには、この“構造把握力”がカギになります。多くの保護者が抱える「読んではいるのに要点が分かっていない」という不安に対して、「要点とは“内容”ではなく“構造上の役割”である」と伝えることで、納得を得やすい層でもあります。この訓練によって、子どもたちは文章を「なんとなく読む」から「設計図を読み解く」に変化し、答案構築の土台がしっかりと育ち始めます。
③問を読む
文章を読んで理解できても、「問われていること」がズレていれば正しい答案は書けません。自校作成校では、「問題文を読めているのに、なぜか点が取れない」という子の多くが、この設問解釈でつまずいています。この層では、「問いを読む力」を徹底的に鍛えます。具体的には、「〜について、あなたの考えを述べよ」「〜の理由を筆者の主張と関連づけて説明せよ」といった設問文の中に含まれる“条件・文脈・指示”のすべてを読み取り、構造的に分解する力を育てます。国語では、設問文の主動詞(述べよ/まとめよ/説明せよ)や補足語句(〜を踏まえて/〜に即して)をマークし、「何を」「どのように」「どの順で」答えるべきかを設計図のように捉える訓練をします。理社では、「2つの資料を組み合わせて〜せよ」といった複数要素型の設問に対し、要素の抽出と記述の順番を事前に明確にします。保護者にとっても、「答えは書いているはずなのに点がもらえない」理由を、“設問の誤読”という形で見える化できる点で、納得感と信頼につながるフェーズです。この層の定着が、まさに“合否を分ける”といえるポイントとなります。
④考え進める
設問の意図を読み取っても、「どう考えを展開するか」が定まっていなければ、記述は支離滅裂になります。この層では、「主張→理由→例」「問い→仮説→根拠→結論」など、考えの順序を型として意識的に使う力=論理展開力を育てます。たとえば、東西の都立トップ校では、記述問題において「なぜそう言えるのか」「どのように〜を説明できるか」と問われる設問が多く、思考の筋道があいまいなままだと、減点や無得点になりがちです。この層の指導では、まず段階的な構成の見本を示し、問いに対してどう順序づけて考えを組み立てるかを、フレームやワークシートを使って視覚化させます。国語では接続語や段落構成を使って思考の流れを作り、数学では仮定→操作→結論を明確に記述。英語でも、段落構成にそったライティングのトレーニングを行います。保護者にとっては、「うちの子、頭の中には考えがあるけど、書き始めるとぐちゃぐちゃになる」と感じるケースに、この層の存在が非常に有効です。論理展開力は“答える力”のエンジンであり、ここが育つことで、記述答案に一貫性と説得力が宿ります。
⑤書き上げ
考えがまとまっていても、それを実際に答案として書けなければ意味がありません。この層では、考えを“伝わる形”に構成・表現して書ききる力=記述構築力を高めます。都立の自校作成校では、国語・理科・社会を中心に、記述問題が配点の大きな割合を占めており、「答えは合っているのに減点される」という現象の多くは、表現の不正確さや文構造の不備に起因します。この層では、①記述の「型」(例:結論→理由→補足)を身につける、②語尾や接続語の正確性を意識する、③字数配分や行数の調整を訓練するといった、答案づくりの具体的技術を反復練習します。また、自分の書いた答案を音読し、「文が長すぎて読みにくい」「主語と述語が合っていない」といった“読み手の目線”で文章を見直す習慣も重視します。保護者の視点では、「思考力があっても書けない」という壁に対し、“書くための筋トレ”があることを提示できるこの層が、信頼感を生むポイントになります。この層の仕上がりが、「答案が伝わる・残る・加点される」かどうかを左右する、いわば“得点力の化粧仕上げ”にあたる部分です。
⑥答えを磨く
この最終層は、知識でも技術でもなく、“自らの学びを点検・改善する力”を養う段階です。ここでは、記述や答案を「書いて終わり」にせず、自分のミスを自力で発見し、論理や表現を修正・再構築する力=自己検証力を鍛えます。都立自校作成校の合格者に共通するのは、「なぜ点が取れなかったか」「次はどう修正するか」を本人が言語化できるという点です。この層では、模試や演習の答案を本人に振り返らせ、①設問誤読、②論理の飛躍、③根拠の欠落、④表現の曖昧さ、などの原因を分解して記録させます。その上で、「次に書くならどう直すか」「どの部分が誤解を生んだか」を“再記述”として書き直し、自分の書いたものを“他人目線”で読む習慣を確立します。理科や社会でも、記述答案の構造と語句の精度を検証し、点が取れる表現を選ぶ感覚を養成します。保護者にとっては、「ミスを繰り返してしまう」「何が悪いか自分でわかっていない」と感じていたお子様が、答案に対して自発的に修正点を挙げ始める姿を見たとき、“この子は自分で伸びていく”という確信と安心感が芽生えます。この層は、合格の決め手であると同時に、高校入学後にも役立つ“学習の自己マネジメント力”を完成させる場面です。