「考える力」を広げる
自校作成校の入試問題は、ただ難しいだけではありません。それぞれの学校が「こんな生徒に来てほしい」という思いを込めて、テーマや出題形式、記述の深さまで細かく設計しています。日比谷・西・国立といったトップ校では、それぞれの大切にしている考え方が問題に表れています。だからこそ、「なぜこの問題が出されているのか」を読み取ることが、学びの出発点になります。この段階では、各校の過去問題をていねいに見比べながら、問題に込められた考え方や背景を感じ取り、理解する力を育てていきます。たとえば日比谷高校では、国語で社会について深く考える力を問う問題が出されることがあります。そこには、「社会をどう見つめ、自分なりの考えを持てるか」という力を大切にしている思いが込められています。こうした目で問題を見ることができるようになると、単なる受験対策にとどまらず、その学校に合った学び方を自然と身につけられるようになります。保護者の方にとっても、「なぜこんなに難しい問題に挑むのか」という疑問に対して、「その学校が育てたい力に合わせているから」という納得感のある説明ができるようになります。この段階では、子どもの学びの向きをそろえ、これからの成長を支える大事な土台をつくっていきます。難関都立自校作成校の入試では、ただ知識を覚えるだけでは足りません。知っていることを「どう使うか」「どう結びつけるか」が問われます。この段階では、教科書で習った基礎内容を、ジャンルごとや考え方ごとに整理し直し、思考の中に確かな“整理棚”を作っていきます。たとえば社会では、年号をただ並べるのではなく、「どの出来事がどの変化につながったか」「経済や文化とどう関係しているか」といった視点で整理します。数学では、公式をただ暗記するのではなく、「なぜこの公式が必要なのか」「どんな場面で使うのか」を考えながら整理していきます。英語でも、文法をひとつひとつ覚えるだけでなく、「この形はどう使われるか」「文章ではどう生かされるか」を意識してまとめていきます。こうすることで、知識がばらばらではなく、いつでも使える形で積み重なっていきます。保護者の方にとっても、「覚えているはずなのにテストでは取れない」というもどかしさが、「知識を活かす力が育ってきている」という手応えに変わる段階です。この段階は、学びを表面的なものにとどめず、しっかりと根を張らせるための、大切な深まりのステージです。
「伝える力」を育てる
自校作成校の入試では、正しい答えを出すだけでなく、「どう考えたか」「どのように答えにたどり着いたか」をきちんと伝える記述力が求められます。この段階では、因果関係や対比、具体と抽象の行き来といった“考え方の流れ”を、言葉できちんと整理し、自分なりに組み立てる練習をしていきます。国語では、段落のつなぎ方や接続語の使い方に気をつけながら、字数に合わせてポイントを絞り、わかりやすく書く力を伸ばします。理科や社会では、「理由→説明→まとめ」という型を意識しながら、図や資料を読み取り、流れに沿って記述する力を育てます。数学では、条件を整理し、順番に筋道を立てながら、計算過程もきちんと示す答案づくりを練習します。保護者の皆様からよく「答えは合っているのに、記述で点が取れない」というご相談をいただきますが、それはこの段階の力がまだ育ちきっていないためです。ここをじっくり積み上げることで、記述式の問題でも確実に点につながる力が育ちます。そしてこの力は、単なるテストのためではなく、将来、自分の考えを社会に伝えていくための大きな土台にもなっていきます。自校作成校の入試では、設問が長かったり、少し難しい言い回しをしていたりすることが多く、問題文をよく読んで、本当に問われていることを正確にとらえる力がとても大切になります。この段階では、「設問をていねいに読み取る力」を育てていきます。たとえば、「…についてあなたの考えを60字以内で述べなさい」と書かれている場合、「60字以内」という制限にはどんな意味があるのか、「あなたの考え」とは、単なる感想ではなくきちんと理由を含めた答えを書くべきなのか、といったポイントに注目する練習を重ねます。また、「資料をもとに説明しなさい」や「適語を入れた上で考えを述べなさい」といった複雑な設問についても、文中のヒントや指示に気づく力を育てます。テストで「設問の意味を取り違えてしまった」という失点は、単なるケアレスミスではなく、「設問を読み解く力」がまだしっかり身についていないことが原因の場合が多いのです。保護者の皆様にも、お子さまの答え方のずれを「注意不足」とだけ見るのではなく、「設問を正しく読む力を育てる必要がある」という本質的な課題としてご理解いただける段階になります。この段階を丁寧に積み重ねることで、「設問の意図を正しくとらえ、ミスを減らす」実戦力が養われていきます。
「伸ばす力」を磨く
入試本番で力をしっかり発揮するためには、知識や思考力に加えて、「どの問題から解くか」「時間をどう配分するか」「問題の切り替えをどう行うか」といった戦略がとても大切になります。この段階では、実際の入試と同じような形式・内容での演習を重ねながら、「得点を最大にするための解き方の順番や時間配分」を準備していきます。たとえば、限られた時間の中で「どこに何分使うか」を最初に考えたり、「記述問題を先に書くか、後からまとめてやるか」を自分で判断できるようにしたりします。選択問題と記述問題を行き来するスムーズな切り替えも意識して練習します。また、過去問演習の中で、「時間配分のミスが多い単元」「得点が安定しにくい設問」など、自分自身の弱点を具体的に見える形にしていきます。こうした力を育てることで、「何となく進めていたら最後の問題までたどり着かなかった」というような失点を防ぎ、安定して得点できる状態を目指します。保護者の皆様にも、「理解はできているはずなのに点数が伸びない」というご不安に対して、「戦略と時間の使い方を準備する段階に来ている」というご説明ができる段階となります。この段階では、単に力をつけるだけでなく、「本番で力を引き出すための方法」を準備していきます。この段階では、「自分の学びを自分で見直し、高めていく力」を育てます。自校作成校の入試では、模試や演習でできなかった問題を、どれだけ冷静にふり返り、きちんと直していけるかが、直前期の成績アップに大きく関わってきます。この段階では、間違えた問題をただ解き直すのではなく、「なぜ間違えたのか」「どこで考え方がずれてしまったのか」「設問の読み間違いか、文の意味取り違いか、理由づけの弱さか」などを、自分の言葉で整理・分類していく練習を重ねます。また、書いた答案を「人に伝える文章」として客観的に見直すことも意識します。たとえば、「相手に伝わる書き方になっているか」「話の流れが自然か」「余計な説明や話のずれがないか」などを自分でチェックし、必要に応じて直しながら、表現力も磨いていきます。保護者の皆様にとっても、「この間違いは理解不足なのか、それとも注意不足なのか」という不安が、実際の答案や記述を通して目に見える形で確認できるため、お子様の成長をよりはっきりと実感できる段階となります。最終的には、模試・過去問・演習をくり返す中で、「ふり返って直す」流れが自然と自分の中にできあがり、合格への力が確実に高まっていきます。