層 | 何をめざす力か | よくあるつまずき |
①出題意図 | 学校ごとの問題の特徴や「どうしてこの問題を出すのか」という意図を読み取る力 | 問題に出てくるテーマや考え方がピンとこなくて、読んでもよくわからないまま進んでしまう |
②構造基礎力 | 教科ごとの知識を、つながりのある形で整理して、「問題で使える知識」に変える | 「この単元は覚えたのに、この問題では使えない」と感じてしまう/内容が頭の中で混ざって混乱する |
③論理記述 | 自分の意見や理由を、図や根拠を使って、しっかりとした文章で説明する力 | 最初はいい感じに書き始めても、途中で話がズレたり、理由がうすくなってしまう |
④設問戦略 | 設問の「どれくらい書くのか」「どこまで答えるのか」などを正確に読みとって、ズレない解答を書く | 設問を読みとばして、「聞かれていないこと」「足りないこと」を書いてしまうことがある |
⑤本番最適化 | 制限時間の中で、どこから解くか、どの順で進めるかなどを自分で決めて、確実に得点できるようにする | 焦ってカンちがいをしたり、後ろの大事な問題に時間が足りなくなったりしてしまう |
⑥再設計 | 自分がどこでまちがえたのかをふり返って、勉強や書き方を自分で工夫できるようにする | 「また同じところでミスした」「どこがダメだったかわからない」と感じて、直しがうまくできない |
① 出題意図
自校作成校入試は、ただ難しい問題が出るわけではありません。日比谷・西・国立などのトップ校は、それぞれの教育理念や求める生徒像に応じて、入試問題のテーマ・形式・記述の深さを設計しています。つまり、「なぜこの問題が出題されているのか」を理解することが、合格への第一歩となります。この層では、各校の過去問分析を通じて、出題の背景や主題にある価値観を丁寧に読み解きます。たとえば、日比谷の国語が「社会に対する思考力」を重視した評論文を扱っているなら、それは単なる読解力だけでなく、「社会をどう捉え、自分の考えをどう持つか」を測っているのです。こうした視点が持てると、単なる対策勉強ではなく、その学校にふさわしい学びのスタンスを取れるようになります。保護者にとっても、「なぜこんな難しい問題を解かせるのか?」という疑問に対して、「学校が見る力が違うからです」という明確な説明ができ、進学の意味そのものへの納得が生まれます。この層は、学習そのものの方向性を整える、もっとも大切な“起点”です。
② 構造基礎力
難関都立の自校作成校入試では、基礎知識は当然の前提とされ、そのうえで「その知識をどう使い、どうつなげるか」が問われます。つまり、“覚えたこと”を“活用できる形”に整え直すことが不可欠なのです。この層では、教科書レベルの内容や中学範囲の基礎知識を、ジャンル別・論理別・構造別に再編成して、「頭の中の棚」を整えていきます。たとえば社会では、「歴史的事件の年号」をただ並べるのではなく、「変化の前後に何があったか」「他の分野(経済・文化)とどう関わるか」を関連付けます。数学では、公式だけでなく「なぜこの公式が必要か」「どの条件で適用すべきか」という選択思考まで踏み込みます。英語でも文法事項を構文パターンとして活用可能な形に整理し、実戦で書く力に転換していきます。保護者の方の中には「覚えてるはずなのに点が取れない」という悩みをお持ちの方も多いでしょう。この層では、その「使えない知識」を「使える構造」へと組み直すことで、実力としての基礎を完成させます。表面的な理解から脱し、土台を本物にするフェーズです。
③論理記述
自校作成校入試の最大の特長は、「思考を記述で表現させる」点にあります。ただ正解にたどり着くのではなく、なぜそう考えたか・どう考えたかを他者に伝える文章が求められます。この層では、因果・対比・具体と抽象の関係などを言葉のレベルで整理し、それらを組み合わせて「論理の骨格」を作る訓練を行います。国語では段落構成と接続語の意味を意識しながら、指定字数に合わせて論点を絞り、説得力のある記述を書く練習を行います。理社の記述では、「根拠→説明→結論」の型を繰り返し、図表の読み取りと文章の接続を意識した表現を鍛えます。数学の記述では、「条件を列挙する→順を追って展開→計算根拠を書く」という、いわば“答案設計図”に基づく書き方を徹底します。保護者からよく聞かれる「うちの子、答えは合ってるのに記述で点がもらえない」というケースは、まさにこの層が未完成である証拠です。この段階を丁寧に積むことで、記述問題で「確実に得点する力」が育ちます。それは単なる国語力ではなく、“考える力を見える形にする力”なのです。
④ 設問戦略
自校作成校の入試問題では、設問の文そのものが長く、抽象的で、答え方に工夫が求められることが多くあります。単に「知っているか」「書けるか」ではなく、「何を聞かれているのかを正確に理解しているか」が合否の差になります。この層では、「設問を読む力」を鍛えます。たとえば、「…についてあなたの考えを60字以内で述べなさい」といった問いがあったとき、「なぜ60字なのか」「“あなたの考え”とは根拠を含むものか」「前文との関係性は?」など、問いの設計を読み解く視点を養います。また、「資料をもとに説明しなさい」「適語を入れた上で自分の考えを述べなさい」などの複合設問では、設問の中の指示語・条件・出題者の意図を見抜く訓練を繰り返します。設問の文を「読み飛ばして」ミスをするお子様は少なくありませんが、それは読み飛ばしているのではなく、「問いの解釈技術」が未習得だからです。保護者にとっても、「答え方がずれている」ことの根本原因を構造的に説明できるこの層の存在は安心材料になります。ここを押さえることで、“設問を読む力”が身につき、「問いを読み違えない=落とさない」状態へと導きます。
⑤ 本番最適化
本番で実力を出し切れるかどうかは、実力そのものと同じくらい、「解く順序」「時間の使い方」「設問間の切り替え力」に左右されます。この層では、実際の入試形式や出題パターンに完全準拠した演習を重ねながら、「入試で得点を最大化するための解き方=戦略的答案作成力」を育てていきます。たとえば、制限時間内でどう配分するか、記述は後回しにするのか先に書き切るのか、選択問題と記述問題の切り替えをどう行うかといった、“得点設計”の訓練がここに含まれます。さらに、過去問の解答時間や得点状況を分析し、「どの設問で毎年つまずいているか」「自分の苦手設問の傾向は何か」を可視化します。これにより、「何となく解いて、時間が足りなかった」「最後の問題が手つかずだった」といった失点を未然に防ぎます。保護者から見ても、「うちの子、わかってるはずなのに点が伸びない」という状況の正体が、“戦略と配分の未訓練”であることが理解でき、納得感ある指導設計として伝えることが可能です。実力を“答案化”する仕組みを、ここで仕上げていきます。
⑥再設計
最終層では、「自分の学びを自分で調整できる力=学習の自走化」を育てます。自校作成校の入試では、模試や演習で「できなかったところ」をどれだけ分析し、再構築できたかが直前期の成績伸長を決定づけます。この層では、間違えた問題をただ“解き直す”のではなく、「なぜ間違えたのか」「どこで論理がずれたのか」「設問の読み違いか、構文の誤認か、根拠不足か」などを言語化・分類し、修正する力を育てていきます。また、答案を「他人が読むもの」として再設計する視点も重視します。たとえば、第三者に伝わる表現か、記述の順番は妥当か、余分な説明や脱線がないかを自己添削して再提出させるなど、“書き直して磨く”工程を通じて論理的自己表現の精度を高めていきます。保護者にとっては、「わかってないのか、うっかりなのか、判断できない」という悩みが解消される層でもあり、答案・記述を通じて“思考の見える化”が実感できる段階です。最終的に、模試・過去問・実戦演習を「次の学びに変えるサイクル」が回るようになることで、合格可能性は実質的に最大化されます。