層 | 主な考え方 | 教室で実際にやっていること |
① 学習環境信頼 | 勉強ができる・できないに関係なく、リラックスして話せる場所にしたい | 明るいあいさつ/まちがえても怒られない/教室がいつも清潔で落ち着く |
② 挑戦機会保障 | わからないことがあっても、自分から手を伸ばして挑戦できる空気にしたい | 「質問してOK」「間違えても大丈夫」「まちがいノートをほめる」文化 |
③ 小さな成功実感 | いきなり完ぺきを目指すのではなく、「前よりできた」を大切にしたい | 小テストの結果に合わせた声かけ/先生からのコメントカード/成果を掲示 |
④ 思考と言語化支援 | 勉強の正解だけじゃなく、「自分で考えた理由」を伝える力も大事にしたい | 「なぜそう思った?」と聞く授業/作文の共有/記述の書き直しを一緒にやる |
⑤ 自己決定育成 | 「やらされる」勉強から、「自分で選ぶ」勉強へ変えていってほしい | 勉強目標を自分で書く/時間の使い方を選ぶ/進み方を自分で考える |
① 学習環境信頼 安心して通える“自分の場所”をつくる
「この教室に来ると落ち着く」「ここなら大丈夫」と感じられる場所は、どんな勉強よりも最初に大事なことです。たとえわからない問題があっても、“安心して間違えられる”空気があると、人は挑戦できるようになります。この層では、あいさつや声かけ、教室の雰囲気を通して、「ここは間違えても受け入れてもらえる場所なんだ」と感じてもらうことを大切にしています。たとえば、「間違えてもいいから言ってごらん」「いいところに気づいたね」といった声かけや、清潔で静かな学習環境づくりなど、小さな積み重ねが“信頼できる学びの空間”を生み出しています。中学生になってからも、自分のペースで勉強を進めたり、質問できる場所があるというのはとても心強いことです。まずは、「教室が好き」「ここにいると前向きになれる」と思ってもらうこと。それがすべての学びの出発点になります。
② 挑戦機会保障 「やってみたい」を応援する教室
「こんな質問していいのかな?」「間違えたら恥ずかしい」——そんな気持ちが先に立つと、せっかくの学ぶチャンスを逃してしまいます。この層では、「わからないことも、やってみたいことも、どんどん言っていいよ!」という空気を教室に広げていきます。たとえば、質問しやすくなるように「質問してOK」と大きく書かれた掲示を貼ったり、「まちがいノート」を使って、間違えた内容を記録し、それを先生が「いい振り返りだね」とほめてくれたりするなど、挑戦そのものを前向きに評価する場面がたくさんあります。また、「ちょっと発表してみようかな」と手を挙げたときには、「よく声出したね!」としっかりフィードバックすることで、自然と子どもたちの挑戦の回数が増えていきます。中学以降も、「自分から動ける力」はすべての学びのベースになります。だからこそ、今のうちに「挑戦は応援されるもの」だと実感しておくことが大切なのです。
③ 小さな成功実感 小さな“できた!”を大事にする教室
「満点じゃないとダメ」「全部覚えなきゃ意味がない」——そんなふうに思ってしまうと、勉強はどんどん苦しくなります。この層では、大きなゴールの前にある“今日のちょっとした成長”を大切にし、それを見える形で伝えることを大切にしています。たとえば、小テストで前より5点伸びたらその場でほめる、前回できなかった問題が解けたら「お、前進したね!」と声をかける。さらに、「できるようになったこと」をまとめて掲示したり、「今週のがんばりメモ」などで本人に自覚してもらう取り組みも行っています。「やれば伸びる」「努力は見てもらえている」と感じることが、学ぶモチベーションになります。中学生になると、テストの点ばかり気にしてしまう子も多くなりますが、本当に力になるのは、「自分は伸びてる」という実感です。それを小学生のうちから積み上げていくのが、この層です。
④ 思考と言語化支援 “考えたこと”をことばにできる力を育てる
学力というのは、ただ答えが合っているかどうかだけではありません。「なぜそう思ったか」「どうしてその答えにしたか」を自分の言葉で説明できることも、すごく大切な学びの力です。この層では、「なぜ?」「どうして?」と問いかけられたときに、自分の頭の中の考えを言葉にする練習をします。たとえば、授業中に「どうしてそう思ったの?」「他に言い方できる?」と先生が問い返してくれたり、作文や記述問題を書いた後に、「理由や順番が伝わっているかな?」とふり返る時間をとったりします。また、自分の書いた作文をクラスで共有することで、表現の工夫や思考の深さに気づくこともあります。こうした言語化の習慣は、国語だけでなく、数学の説明問題や理科の考察など、中学のあらゆる教科で役立つ力になります。「わかっているけど、うまく言えない」状態から、「考えを伝えられる」自分へと成長していく段階です。
⑤ 自己決定育成 “自分で決める”を応援する教室
「やりなさい」と言われてやる勉強は長く続きません。この層では、「自分で決めたことに向かって努力する」経験を増やし、自信と自己肯定感を育てることを目指しています。たとえば、「今週どんな目標で取り組む?」「この問題集、どこから進めたい?」と先生から問いかけられ、自分で選ぶことができます。また、授業中の取り組み時間を「先に苦手な問題をやる」「まず基本を固める」など、自分で配分して決める機会もあります。こうした小さな選択の積み重ねが、「自分の勉強は自分で考えて動く」という習慣をつくっていきます。中学生になると、授業・部活・家庭学習のバランスをとる場面が増え、「どうやって自分の勉強をコントロールするか」が問われます。小学生のうちから“選ぶ力”を育てることが、「やらされる勉強」から「やりたい勉強」への転換点になります。