層 | 考え方 | 東京大学入試問題 | 開成高校入試問題 |
① 準備力 | 問題文を読む前の知的素地 | 社会科学・理系論文のテーマに接する経験 | 近代文学・抽象的テーマを理解する素地 |
② 整理力 | 長文・資料を素早く構造的に把握 | 資料×文章型問題への対応 | 問題文構造の瞬時把握 |
③ 接続力 | 段階的思考の流れを論証する訓練 | 理由・結論の明確化が合否を左右 | 接続語・思考ジャンプの精緻化がカギ |
④ 分解力 | 設問の要求(型・分量・指示)を解剖 | 1問に複数設問要素がある | 「問いに対する正確な答え」力が求められる |
⑤ 構築力 | 100〜400字での抽象的表現訓練 | 文の骨格と整合性が採点の鍵 | 曖昧表現が大減点のリスク |
⑥ 再構築力 | 模試・答案分析から論理の欠損を自分で修正 | 再記述・自己添削型の学習 | 論理の筋違いや指示語のミスを自覚 |
① 準備力
東大・開成に共通するのは、「文章を読んだうえで、自分の考えを論理的に書く力」が求められることです。しかしその前提として、文章の内容を正確に理解するための教養・語彙・背景知識が備わっていなければ、論理どころか読解そのものが成立しません。この層では、本文を読む以前に必要な「知的下地」を整えます。たとえば東大入試では、環境・言語・科学哲学・経済社会など、大学初年次レベルの概念を含む文章が出題されます。内容自体は高度ですが、テーマとしての“接触経験”があれば読みやすさは一気に変わります。一方、開成では近代文学や抽象テーマを含む長文が頻出し、「読める子」と「読めない子」が明確に分かれます。ここでは、頻出テーマの概観、基本語彙の確認、ジャンル別の背景知識などを通じて、「見たことがある」「話題として聞いたことがある」状態を作ることが狙いです。保護者の視点では、「設問以前に、そもそも文章が理解できていないのでは?」という不安を持つ方も多く、それに対し「読みの土台を育てる設計がある」と伝えることで、学習の納得感と安心感が得られる層です。
② 整理力
東大や開成の記述式問題では、長い文章や複数資料を前提に、論点を読み取り、情報を整理しながら自分の答えを組み立てる必要があります。このとき、「何を読むか」「どこに注目すべきか」という情報処理能力が試されるのが、この素材整理層です。東大では、資料文+文章の組み合わせが多く、数千字の中から答えに必要な根拠を瞬時にピックアップしなければなりません。つまり、「早く・正確に・構造的に」読む力が得点力の土台となります。開成でも、抽象的で文脈的な文の中から、設問に関係する部分を抜き出す処理能力が不可欠です。この層では、文章や資料を読みながら、「段落の役割」「キーワード」「対比構造」「因果の流れ」などをマーク・メモし、頭の中に「論理の地図」を描く訓練を行います。保護者からすると、「うちの子は読んでいるのに、なぜか答えがズレてしまう」という現象をよく耳にします。その原因は、実は“内容の整理の仕方”にあることが多く、この層で「読みながら頭を整理する」力を習得することで、記述に至る前の理解力が格段に向上します。
③ 接続力
文章を読んで要点を把握し、設問に対応しようとしたとき、「なんとなくはわかっているけど、どう答えればいいかわからない」という壁にぶつかる子は少なくありません。その原因の多くは、頭の中の思考を“つなげる力”=論理接続力の未熟さにあります。この層では、因果・対比・具体⇔抽象といった論理関係を自覚しながら、情報同士を正確につなげる技術を学びます。東大では、数段階にわたる思考展開(A→B→C)を丁寧に追って論証することが求められ、途中の論理の飛躍や接続の曖昧さは即減点の対象となります。開成でも、短い記述の中に明確な論理展開がなければ、「何を言っているのかわからない」という評価になりやすくなります。ここでは、具体例から一般化する流れ、理由→結果→意見という順序、反対意見への応答など、使える論理パターンを意識化し、型として身につけることを目指します。保護者にとっては、「何となく書いていて、減点されている」という現象に対し、「論理の接続が不明瞭だから」という明確な説明が可能となり、具体的に“何を訓練しているのか”が見える安心のフェーズです。
④ 分解力
どれほど本文が理解できていても、設問を正確に読み取れなければ記述で得点を積み上げることはできません。特に東大・開成のような思考型入試では、設問文自体が長く、条件が複雑に組み込まれているのが特徴です。この層では、設問を「読解対象」として扱い、問いの構造や意図を論理的に分解する力を育てていきます。たとえば東大では、「〜を踏まえた上で、〜について、あなたの考えを述べよ」のような多段構成の設問が多く見られます。生徒は設問文の中の接続語・助詞・字数制限などを手がかりに、「何について、どの視点から、どの順序で書くべきか」を明確にしておく必要があります。開成でも「資料を使って説明しなさい」「筆者の意見に賛成か反対か、自分の立場を明示せよ」など、設問内に複数の条件が埋め込まれており、1語でも読み違えれば減点や方向性のズレにつながります。ここでは、設問文をマークアップし、「主たる動詞」「設問の型」「評価されるポイント」を明示的に把握する訓練をします。保護者にとっては、「読めているのに問われていることとズレている」お子様への明確な対応策として、この層の存在が極めて説得力のあるものになります。
⑤ 構築力
論理的に考える力と設問を読み解く力があっても、それを答案として形にできなければ意味がありません。この層では、「どう書くか」を具体的に習得し、読んだ人に伝わる記述を完成させる力を磨いていきます。東大では100〜400字という長めの記述が多く、論点整理・段落構成・接続語の運用・文末の処理など、高度な構成力と表現力が求められます。複数の論点を正確に順序立て、段階的に展開する力が必須です。一方、開成は設問あたりの字数が短い分、論点を端的に示す“凝縮力”と“文章の切れ味”が重視されます。冗長さや曖昧さ、語尾のブレは即減点対象になります。この層では、「型を持って書く」ことからスタートし、〈結論→理由→補足〉や〈主張→根拠→例示〉など、答案の骨格づくりを徹底します。また、「第三者が読んでも論理が伝わるか」を意識させ、書いた後に声に出して読んだり、同級生と答案を読み合ったりする活動も取り入れます。保護者にとっては、「考えてはいるけど書けない」というお子様の状況に対し、「書けるようになるための技術がある」と確信を持てる重要なフェーズです。
⑥ 再構築力
最終層では、書いた答案を「書いて終わり」にせず、自分で読み返し、修正し、よりよい論理・表現に再構築する力を育てます。東大・開成に限らず、記述式入試において合否を分けるのは「再現性」と「精度」です。同じ実力の生徒でも、“一度書いて満足する子”と“書いた後に何がズレていたかを自力で修正できる子”では、得点に大きな差が出ます。この層では、まず模試や過去問演習で書いた答案を分析し、「論理の飛躍」「接続の不備」「主張のズレ」「余分な表現」「主語と述語のねじれ」などをチェックリストで自己評価します。そして、「なぜこのミスが起きたか」「次に書くとしたらどう直すか」という問いを通じて、“思考の誤り”を認識し、言語で修正するトレーニングを積み重ねます。東大ではこれが特に重要で、連動する複数設問に対して論理的な一貫性を保つ力が必要です。開成でも、「書いたこと」と「問われていたこと」の対応を自分で見直せる子ほど、最後の得点調整ができるようになります。保護者にとっては、「どこをどう直せば良くなるか」がお子様自身の言葉で語られるようになることで、「この子は本当に“考えている”」という実感と安心感が深まる層です。