「学びの基礎を固める」
中学受験というと、「むずかしい問題にチャレンジする」というイメージが強いかもしれません。けれど、本当に大切なのは、どんな問題でもゆらがない“当たり前の力”を、地道に育てることです。この段階では、・計算、漢字、語句、基本の言葉といった全教科にかかわる大事な土台を、ていねいにくり返し、はやく・正しく・まよわずに使えるようにすることを目指します。たとえば算数では、分数・割合・単位の変換などを正確に使いこなすこと、国語では、漢字・言葉の意味・ことわざなどを、自分の言葉として扱えるようにすること。ここでのポイントは、ただ“おぼえる”のではなく、実際の問題の中で“使える”ようになることです。応用問題で手が止まってしまうのは、じつはこの小さな基礎のぬけが原因のことが多いのです。むずかしい問題にいく前に、ふつうのことを、ちゃんとできるようにすること。この「当たり前」を仕上げていくことが、どんな受験でも一番はじめの大切な土台になります。受験に向けた学びでは、「むずかしい問題にどう立ち向かうか」が大切になります。この段階では、教科ごと・単元ごとに“よく出る型”を見きわめ、その考え方を何度もくり返し、体にしみこませていくことを目指します。たとえば算数なら、・つるかめ算・面積図・比の三段階の考え方 など、
国語では、・記述の三つの流れ(理由→根拠→まとめ)・対比の読み取り方 など、「この問いには、こう考える」という“型”を整理し、自然に引き出せるようにします。応用問題で戸惑う子の多くは、「考え方のくせ」がまだ整理されていないだけなのです。だからこそ、手順だけを覚えるのではなく、「なぜこの問いが成り立つのか」「どこに目を向ければいいか」といった“問いの土台”からじっくり育てていきます。応用に強くなるとは、むずかしい問題にすぐ正解することではありません。初めての問題にも「見たことがある型」で冷静に対応できる思考の準備があること。その“型の備え”こそが、本番であなたを支える力になります。
「考える力を伸ばす」
最近の中学入試、特に上位校では、「どれだけ知っているか」よりも、「その場でどう考えるか」が大きく問われるようになってきました。この段階では、たとえば――算数では、いくつもの条件を整理しながら、正確に道筋を立てる力。国語では、ちょっと難しい抽象的な文章を、ていねいに読み取る力。社会や理科では、グラフや表から大事な情報を見つけ、自分の言葉で説明する力。そうした「考える力を形にして伝える力」を育てていきます。ただ○か×かではなく、「どうしてそう思ったのか」「どんな順で考えを進めたのか」――そうした“思考のすじ道”を、先生との対話や、記述の練習を通して準備していきます。一見、しっかり考えているように見えても、うまく言葉にできなかったり、説明の途中で話がそれてしまったり……。そんなときこそ、この段階の鍛え直しが必要なサインです。ここで育てた力は、入試の点数だけでは終わりません。中学のディスカッションや、探究の授業、発表・プレゼンなど、これからの学び全体を支える力になります。「正しいかどうか」だけを気にするのではなく、「どう考え、どう伝えるか」を大切にする。それが、この段階の学びの本質です。入試では、「知っていること」を問われるだけでなく、「どう考え、それをどう伝えるか」が大切にされるようになってきました。この段階では、国語・理科・社会・算数すべてにおいて、“考えをきちんと書き表す練習”を積み重ねていきます。たとえば、国語では「問い→本文のどこを使うか→なぜそうなるか→どうまとめるか」理科や社会では「資料を読み取る→原因や背景を考える→結果につなげて説明する」算数では「どう考えたか→どんな式を立てたか→どう答えを出したか」——このように、それぞれの教科に合った“書き方の流れ”をわかりやすく示し、少しずつ練習していきます。「書けない……」と感じる子の多くは、“どう書けばいいか”の地図を持っていないだけなのです。指導では、先生がその子に合った“記述の設計図”を一緒に描きながら、くり返しの演習とやさしい添削を通して、書く力を準備していきます。書くことが「こわい」から「できそう」に、「できそう」から「得点できる」に変わる——この変化こそが、この段階で育てていく一番の成果です。そしてこの力は、入試だけにとどまりません。将来、人に伝える力・考えを形にする力として、長く支えとなってくれます。
「次のステージへつなぐ」
受験という場では、「どれだけ知っているか」だけでなく、“知っていることを、その場で落ち着いて出せるかどうか”がとても大切です。この段階では、時間の使い方、解く順番、見直しの入れ方など、“本番で力を出しきるためのくふう”を身につけていきます。たとえば——「どの問題から解きはじめるとよいか」「解くのに時間がかかる問題はどう扱うか」「最後の5分をどう使えば、得点がのびるか」こうした“試験での動き方”そのものを、演習や模試の中でくり返し練習していきます。「家ではできたのに、本番で点がとれなかった」「あと少しでできたのに、時間が足りなかった」——そんな悔しさを、少しずつ乗り越えていくための段階です。さらにこの段階では、まちがい直しのやり方・緊張したときの姿勢や呼吸の整え方など、本番を“味方にする力”までいきます。「受験って、こわくないかもしれない」「ぼくにも、ちゃんと出しきれる気がする」そんな気持ちが芽ばえることが、この段階の到達点です。実力 × 出しきる力 = 合格力、その“かけ算の準備”を、ここで押さえ押さえていきます。中学受験を終えたとき、多くの子どもたちは、ひとつの山を越えたような気持ちになります。けれど本当に伸びていく子は、その努力を、「自分の学びの土台」として、これからも積み重ねていきます。この段階では、受験勉強で身につけた力を、中学校の新しい学びにつなげていく“学びのかけ橋”をつくっていきます。たとえば——国語の記述力を、社会のまとめや説明に・算数の考え方を、数学の証明や図形に・理科の知識を、中学理科の深いしくみ理解へ——こうして、「使える形」に翻訳していくことが、この段階の大きな役割です。受験が終わった春、どんなふうに新しい学びへ向かうか。春期講座や中学入門クラスでは、先生と一緒に「これから、どう学び直すか」「どう先に進むか」を調整していきます。保護者の方からも、「受験後に燃え尽きてしまうのでは……」という声をよくいただきます。だからこそ、私たちはこの段階で、「合格で終わらない学び」を、具体的に準備するのです。合格は終わりではなく、“はじまり”。そのことを、子どもたち自身が受けとめられるように——。ここからまた、新しい一歩を踏み出す準備を、共に進めていきます。