層 | 主な内容 | よくある小学生のつまずき例 |
① 読みとる力 | 長い問題文や図表の中から、「どこが大事か」を選び取る練習をする | 問題文が長いと混乱/グラフや図をちゃんと見ずに答えてしまう |
② 整理して考える | 抜き出した情報を「どの順番で使うか」「どうつながっているか」考える | あちこちの情報が混ざって、考えがバラバラになる |
③ つなげて考える | 原因→結果、対比や並列など、論理的に考える練習をする | 結論だけ書いて理由が言えない/「なんとなくそう思った」で終わる |
④ 視点を広げる | 自分以外の立場や視点で物事を考え直すトレーニング | 自分の意見だけで止まる/違う見方を思いつけない |
⑤ 考えを形に | 順番・言葉のつながりを意識して、わかりやすい文を書く練習 | 記述で話がずれる/順序が乱れて伝わらない文章になる |
⑥ ふり返って直す | 自分の答えを見直したり、人の意見と比べて考え直す力を育てる | 合っていればOK、間違っていたらそのまま放置、で終わりがち |
① 読みとる力
中学でもよくあることですが、「問題文が長くなると、どこが大事なのか分からなくなる」「図や表が出てきたら、つい読み飛ばしてしまう」——これは小学生でも同じです。この層では、問題文や図表の中から「どの情報を使って考えるのか」を見つける力を育てていきます。たとえば、「この文章の中で“計算に使える数字”はどこ?」「グラフで注目すべき点はどこ?」など、“情報の拾い方”から丁寧に練習します。これはただの読解ではなく、「問題を解くために読む」「条件に沿って読む」という、“考えるための読み取り”の力を育てるトレーニングです。中学生になっても、「書いてあるのに気づけない」「条件を見落としてミスした」ということはよくあります。だからこそ、小学生のうちから「必要な情報だけを正確に取り出す力」を育てておくことが、すべての教科に通じる大事な一歩になるのです。
② 整理して考える
考える前に、頭の中がごちゃごちゃになってしまう——これは、「情報を並べ替えたり、整理したりする力」が足りていないときによく起きます。この層では、集めた情報を「どんな順番で考えればいいか」「どういう関係があるのか」に整理する力を身につけていきます。たとえば、「まずどれを計算する?」「こことここは関係している?」「時間が先?出来事が先?」といった、“考える前の準備”を整える練習です。中学生でも、文章題でどこから手をつけるか分からない、条件が複雑で頭が混乱してしまうという子は多くいます。情報を整理するクセがあると、問題を解くときに「これは先に使う情報」「これは後でチェック」といった“考える順番”が自然と身についてきます。思考のスタート地点をクリアにしておくことで、無駄に時間を使ったり、考えの途中で迷子になったりするのを防げるようになります。
③ つなげて考える
「なんでそう思ったの?」と聞かれたときに、「うーん、なんとなく…」と答えてしまうこと、ありますよね。でも、テストや面接、将来の仕事でも、「なぜそう考えたか」を説明できる力はとても大切です。この層では、「だからこうなる」「この理由でこう言える」と、論理的に考えて説明する力を育てます。具体的には、「この場合はこうなる→だから答えはこう」「AとBを比べると、○○の点が違う→だからこっちが正しい」といった、理由と結果をつなげる練習をします。「対比」「因果」「並列」などのつながり方を学ぶことで、説明がはっきりするようになります。中学に入ると、ただ答えるだけではなく「その理由を述べよ」という問題が増えてきます。この力を小学生のうちから意識しておくと、記述問題やディスカッションでも「筋が通った説明」ができるようになり、相手に伝わる力も自然と育っていきます。
④ 視点を広げる
「こう思ったから、これが正しい!」で止まってしまうと、自分の考えに固まりすぎてしまい、他の可能性に気づけなくなります。この層では、自分とは違う立場や見方からも考えてみる力を育てていきます。たとえば、「この場面を別の人の立場で見たらどう感じる?」「もし反対の意見だったら、どんなことを言う?」といった練習を通して、一つの考え方にしばられず、柔軟に思考を広げることを目指します。中学生になると、社会や国語の記述問題などで「多角的に見る力」が必要になりますし、ディベートや作文でも「他の意見をふまえたうえで自分の考えを述べる」ことが求められます。この力が育つと、自分の意見に深みが出るだけでなく、「間違いに気づける」「納得して修正できる」といった成長にもつながります。思考の広がりが、“かしこい子”ではなく、“考え続けられる子”をつくっていきます。
⑤ 考えを形に
「考えたことはあるけど、どう書けばいいか分からない」——これは多くの小学生がぶつかる壁です。この層では、自分の考えを“順序立てて”わかりやすく表現する力を育てていきます。たとえば、「まず言いたいこと→その理由→まとめ」といった基本の構成を使いながら、少しずつ自分の言葉で書けるように練習します。また、接続語の使い方や、段落の分け方、伝えたい内容の強調の仕方も身につけていきます。中学になると、国語の記述問題だけでなく、理科や社会、英語でも「考えをまとめて書く」場面が増えてきます。書く力がつくと、「考えが整理される」「自分の思考を見直せる」「人に伝えられる」ようになり、学習のすべてにいい影響を与えます。考えることと書くことは、別々ではなく“つながっている”。そのことを実感できるようになるのが、この層の大きなねらいです。
⑥ ふり返って直す
一度書いたことや考えたことを、「本当にこれでよかったかな?」と見直す力は、中学生以降の学びに欠かせません。この層では、自分の思考や表現を“自分でチェックして、よりよくする”力を育てていきます。たとえば、「自分の答えをもう一度読んで、ズレていないか確認する」「友だちの答えと比べて、自分の考えに不足がないか考える」といったように、他者との違いをふまえて自分の考えをふり返る練習をします。ただ丸つけをして終わり、間違ったら放っておく——という習慣をなくし、「次はこうしてみよう」と考え直す姿勢を育てます。この力がつくと、失敗が“終わり”ではなく“次の改善ポイント”になります。自分の考えを見直せる子は、どんな教科でも伸びていきます。思考の内省と修正は、「考える力」の最後の仕上げです。