テストの点数が上がったとき、子どもはもちろん嬉しそうにします。けれどその裏側で、「どうしてこの答えになったのか」「他の選択肢と何が違ったのか」といった問いを持ち、じっくり考えた経験があったかどうか──それこそが、学びの質を左右するものだと私たちは考えています。もちろん、点数は大切です。成果として見えやすく、次のステップへの指標にもなります。ただ、点数の上がり下がりだけでは見えない“その子なりの思考の深まり”こそが、本当の意味での成長を支えているのです。
私たちが塾という場所で目指しているのは、「正解を多く知っている子」ではなく、「考えを持てる子」です。「なぜそうなるのか?」「他の考え方はあるか?」「これは本当に自分の答えか?」と問いを持つ姿勢は、すぐに数字になって表れるものではありません。けれど、その問いの習慣は、ある日突然、深い理解として立ち上がります。私たちは、その瞬間を焦らず待つ力を持ちたいと思っています。
たとえば、問題が解けたときにも、「それは偶然?」「自分の力で導けた?」と問いかけることがあります。また、記述問題では「何を書くか」よりも、「どう書こうとしているか」を大切に見ています。それは、「できた・できなかった」では判断できない、その子の“考え方の動き”にこそ価値を感じているからです。こうした視点で関わることで、子どもたちの中に「正しい答え」を求めるだけでなく、「自分の考えを持つ」力が少しずつ育っていきます。
保護者の方にとっては、「もっと点を取ってほしい」「もう少し早く進んでほしい」という思いがあるかもしれません。それは当然のことですし、私たちも成果を大切にしないわけではありません。ただ、その成果を支えるのが、「どう考えたか」「どう感じたか」といった内面の声であることは、実は多くの保護者の方が直感的に理解してくださっています。「うちの子、最近よく“どうしてこうなるんだろう”ってつぶやくようになったんです」。そんな声を聞くたびに、私たちは手応えを感じます。
塾という場所は、「解き方を教える場」でもありながら、「考え方を育てる場」でもあるはずです。だからこそ、すぐに効果が見えない問いかけにも、意味があると思っています。子どもたちが「考えること」を楽しみ、自分の言葉で「こう思う」と語れるようになる。その時間を、静かに積み上げていける塾でありたいと私たちは願っています。たとえ成果がすぐには出なくても、思考の中で動き始めた「その子なりの言葉」は、やがて確かな力へと育っていくのです。焦らず、急がず、でも確かに。「考える子を育てたい」。それが、私たちが大切にしている塾の姿です。
教室代表