層 | 指導内容 | ポイント | よくあるつまずき例 |
① 土台かため | 計算・漢字・語句・基礎知識の正確さ・スピードの強化 | 「受験勉強の前に“土台”を完成させてくれる」 | 演習でミスが多い/基礎が崩れて応用に行けない |
② 単元の伸ばし | 各教科の頻出・応用パターンを単元ごとに整理・反復 | 「“入試に出る解き方”が効率的に身につく」 | 応用問題の読み取りで手が止まる/計算に時間がかかる |
③ 考えて解く | 資料読み取り・条件整理・論理構成など複合問題の訓練 | 「開成・麻布などの“考えさせる問題”に対応できる」 | 一度の説明では理解しづらい/手順の順番が不安定 |
④ 伝える力 | 筋道の通った説明文・記述答案の作成演習 | 「記述採点に強い書き方・型が身について安心」 | 書き出しで手が止まる/文の構成がずれてしまう |
⑤ 本番に強く | 解く順番・時間配分・緊張下での再現練習 | 「“試験本番に強い子”を目指した練習設計」 | 時間切れ/解けたのに点にならない/焦って失点 |
⑥ 進学につなぐ | 受験勉強で得た力を中学進学後の学習に“翻訳”する指導 | 「“受かったら終わり”ではなく“受かってからも安心”」 | 解法の暗記に偏り、進学後に学力が伸び悩む |
① 土台かため
中学受験対策は“難しい問題に挑戦すること”だと捉えられがちですが、真に大切なのは、どんな応用にも耐えられる「基礎力の安定」です。この層では、計算・漢字・語彙・基本語句など、教科横断的な基礎事項を反復・強化し、「速く・正確に・迷わず」処理できる状態を目指します。たとえば、算数であれば「分数・割合・単位の変換」などのミスを限りなく減らし、国語であれば「漢字・語句の意味・ことわざ」などを確実に記憶・運用できるようにします。これらは単なる暗記ではなく、「使える」形に変えていく訓練です。保護者の方が「応用になると手が止まる」「最後まで問題が解ききれない」と感じている場合、基礎の処理スピードや正確性に小さな抜けがあることが原因である場合が非常に多いです。この層では、“難問演習”に入る前に、“当たり前のことが当たり前にできる”レベルを徹底することで、上の層に進む準備を整えるのが最大の目的です。どんな受験設計でも、すべてはここから始まります。
② 単元の伸ばし
この層では、各教科ごとに入試頻出の「単元×パターン」構造を整理し、「このタイプの問題が来たら、こう考える・こう解く」という“入試に効く思考の型”を反復トレーニングで習得させます。たとえば、算数であれば「つるかめ算」「面積図」「比の三段階処理」など、国語では「記述の3層(理由・根拠・まとめ)」「対比型の読解構造」など、単元ごとの応用パターンを意識的に繰り返すことで、初見の問題にも応用できる“型の引き出し”を持つ状態を目指します。保護者にとって、「応用問題になると焦ってしまう」「似た問題を繰り返しているのに得点にならない」といった悩みの裏には、“思考パターンが整理されていない”ことがあります。この層では、解法の手順だけでなく、その問題が「なぜそう問われるのか」「どこにポイントがあるのか」といった“問いの構造理解”を意識させながら指導を行います。中学受験における応用力とは、「初見を初見のままにしない」訓練なのです。
③ 考えて解く
近年の中学入試、特に難関校では「知っているか」ではなく、「その場でどう考えるか」「どう整理し、どう表現するか」が問われる出題が増えています。この層では、算数の複合条件処理、国語の抽象的テーマ読解、社会・理科の資料読み取りと記述など、“与えられた情報を構造化し、論理的に考える力”を育てる演習を行います。単なる正誤ではなく、「どう考えたかの過程」「なぜその答えになったかの説明」を重視し、講師との対話やペア学習、記述トレーニングを通して“自分の考えを言語化する力”を養います。保護者の方が「考えているのは分かるけど、答えが出せない」「説明させると話が飛ぶ」と感じている場合、それはこの層での力がまだ育ちきっていないサインです。ここでの指導は、受験での得点力だけでなく、中学以降の探究学習やプレゼン活動などでも活きる“真の思考力”の土台を育てます。「答えの正しさ」ではなく「考え方の深さ」を重視するこの層が、難関校突破のカギとなります。
④ 伝える力
中学入試では、記述問題が得点差を生みやすい時代です。単に知識を持っているだけでなく、「問いに即した形で、筋道立てて書く」ことが求められます。この層では、国語・理社・算数のすべてにおいて、記述の「型」と「流れ」を身につけるトレーニングを行います。たとえば国語では、「設問→根拠→理由→まとめ」の4層、理社では「資料→読み取り→背景→因果関係」、算数では「考え方の説明→式→答え」など、教科ごとに“書き方の設計図”を用意して練習します。多くの保護者が「うちの子は書くのが苦手」「答えは分かっているのに説明できない」と感じておられるのは、“どう書けばよいか”の経験が不足しているからです。この層では、書き方を一から教え、“伝える力”を演習と添削を通して伸ばします。単なる作文とは異なり、「誰に・何を・どう説明するか」の視点を持たせることで、記述が「面倒なもの」から「得点源」へと変わっていきます。 中学受験の合否だけでなく、将来の思考力・言語力の土台にもなる重要な力です。
⑤ 本番に強く
受験の本番で問われるのは、「力があるか」ではなく、「その力を出せるか」です。この層では、時間配分・問題の選び方・見直しの順序といった、“戦略的な解き方”を身につけるトレーニングを行います。たとえば、「どの問題に何分かけるかを最初に決める演習」「1問目から解かずに得点優先で進める練習」「見直し時間の確保を前提に設計された模擬テスト」など、緊張下でもパフォーマンスを最大化する設計を導入します。多くのご家庭で「家では解けるのに、本番では点が取れない」「時間が足りずに最後まで解けない」という課題が起こるのは、試験対応の訓練が“足りていない”からです。この層では、学力を「出力できる」状態に持っていくために、「知識×戦略×メンタル」を一体で育てる実戦型の指導を行います。さらに、間違えた問題の見直し方や、冷静に問題に向き合う呼吸法・姿勢など、細部にまでこだわる指導によって、子ども自身が“受験に向いてきた”と実感できる段階をつくります。受験とは、実力と本番力の“かけ算”で決まるもの。この層がその“×”を担います。
⑥ 進学につなぐ
中学受験に合格した後、学力が伸び続ける子と、そこで止まってしまう子の違いは、「受験勉強が“思考の習慣”になっているかどうか」です。この層では、受験で培った知識や技術を、中学での探究・論述・プレゼン・定期テスト・難解読解などにつなげていく「学びの翻訳」を意識した指導を行います。たとえば、国語の記述力を社会の論述に、算数の思考手順を数学の証明に、理科の論理を中学理論理解へと橋渡ししていきます。また、受験後の春講座や中学入門カリキュラムでは、「受かったあとに何をどう学ぶか」を一緒に計画し、“伸び続ける学習者”としての意識と習慣を築き直す時間を大切にします。保護者の方も「せっかく頑張ったのに、中学に入ってから失速してしまうのでは」と不安に思われることがあるでしょう。この層の目的は、“合格で終わらない教育”=“合格を次の成長の出発点にする教育”を具体的な学習設計に落とし込むことです。中学受験で終わるのではなく、“学ぶ力そのものが伸びる”ように支えることが、私たちの本当のゴールです。